オンライン講座《日本古典への招待》枕草子−歴史そのままと歴史離れ−(後半)NEW
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《日本古典への招待》枕草子−歴史そのままと歴史離れー 後半講座
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●講師からのコメント
『枕草子』は10世紀の終わりから11世紀の始めにかけて成立した不思議な作品です。内容は歌枕のような地名、辞書的な項目、ひねりの利いた皮肉な分類、宮廷女房日記的なものと、多彩ですが、いずれも、中宮定子の女房としての価値観と美意識を背景としたユニークな文章の集成となっています。
今回は、『枕草子』の宮廷日記的な側面に焦点をあてながら、『枕草子』が書こうとした歴史と、他の歴史資料によって想定される事実との落差、隔たりを取り上げ、『枕草子』がいかに、歴史的事実に背き、抗い、独自の世界を構築していったのかを見ていきます。
そのことで、『枕草子』が描こうとした世界の本質を明らかにし、当時の読者にもたらした影響も考えます。『源氏物語』の登場の10年ほど前に登場したこの『枕草子』という作品がどのように享受され、どのような波及効果を生み出したか。それが後々までどのように受け止められてきたかも併せて考えていこうと思います。
●第八回 「草の庵」段の噂話伝播
道隆の亡くなる少し前、その重態が明らかになったころから、『枕草子』は、宮廷の中の世論の動きに敏感になっていきます。圧倒的権力にバックアップされた状況から、心細い境遇に陥った現状を見据えながら、『枕草子』は、中宮定子の側近として、宮廷社会に常に話題を提供する、明るい話題の供給源として、自覚を深めていきます。
『枕草子』が「語り」の文芸として変貌していく過程を、有名な「草の庵」の章段を読むことで明らかにしていきましょう。
●第九回 「かへる年の二月二十余日」段の空間分割
「草の庵」の段は清少納言の良き理解者であった藤原斉信との仲違いと和解をめぐるドラマでしたが、その一年後の二月を描く「かへる年の」の章段では、清少納言は二人の間に超えられない一線があることを自覚します。なぜ、そのような距離が生じてしまったかを考えると、背景の政治の激変を考えざるをえません。
長徳の政変で道長方についた斉信と、定子に仕える清少納言の埋めがたい距離をめぐって、『枕草子』は象徴的なある一日を描き出します。
●第十回 「殿などおはしまさで後」の政治情勢
道隆の病と死、それに続く激動の中で、清少納言もその忠誠心を疑われ、孤立し、多くの友人・知人を失いました。苦しい状況の中で、邸も焼かれ、誰からも庇護を受けられない苦悩の中で、どのように清少納言の宮仕え復帰が叶ったのか。
定子からの「紙」の再度の贈与、「畳」の贈与、「山吹の花びら」の贈与によって、定子から寄せられたほぼ「無言」の信頼の証しによって、清少納言が宮仕えに復帰する決断を示すまでを追っていきます。
●第十一回 「ほととぎす探訪」段の郊外
定子は二条宮を焼け出されてしばらくは伯父高階明順の家に身を寄せていたのですが、やがて内裏に近接する職御曹司に迎えられます。その職御曹司での徒然の生活の中で、積極的に外の自然や景物に関心の幅をふやしてくいくさまを読みます。
五月五日になると鳴き始めると言われたほととぎすの初音を求めて、郊外歩きに乗り出していく心のはずみを、『枕草子』の新しい変貌と展開として読んでいきます。
●第十二回 「雪山」段の時間と空間
中宮定子はこの職御曹司に三年滞在しますが、その間、天皇とは会えない日々をすごしていました。乞食尼のような存在も出入りする寂しい境遇でした。
中宮の命令で降り積もった雪を、大きな雪山に作って、いつまで長持ちするかの賭けに熱中したのも、寂しい境遇のせいでしょう。しかし、賭けをめぐる清少納言の熱中は周囲の共感を呼ばず、微妙な孤立が明らかになります。
職御曹司の日々の終わりと重ねられる雪山の日記の意味を考えていきましょう。
●第十三回 「大進生昌が家に」段の「門」
中宮定子は再び宮中に入りますが、内裏が火災に遭ったこともあって、定子の宮中復帰は歓迎されず、再び天皇の御子を身籠っても、周囲の冷たさは変わりません。
出産のために平生昌の家に里下がりをした場面を描く「大進生昌が家に」段では、宮中の嫌がらせや、批判が高まって、とりわけ、生昌の家の「門」が中宮御所たる格式を備えていなかったことが問題とされたのです。
『枕草子』はこの「門」にまつわる世間の非難をどう描いたか。具体的に見ていきましょう。
●第十四回 「翁丸」段の猫と翁丸追放
翁丸の段は定子の生前最後の日々を描く章段です。
第一皇子も生まれ、さらにまた身籠っている定子ですが、道長の長女彰子が入内し、定子は皇后に棚上げされ、彰子が中宮となって、圧倒されています。そのような日々に皇后の心を支えたのは翁丸という犬の存在でした。
この段は帝の猫溺愛に端を発した翁丸追放劇とそれに心を痛めた皇后定子周辺の受け止め方を語り、犬と猫の話がひそかに過去の伊周追放劇を呼び起こしていくさまを語っていきます。
●第十五回 定子の死と『枕草子』の流通
皇后定子は媄子内親王出産直後に命を落としました。二十五歳の生涯でした。
その死の前後には帝の母東三条院詮子も危篤に陥り、物の気が出たということで、宮廷世界には動揺が広がりました。物の気が取りついたのは詮子と道長だったのですから、定子の恨みも深かったのでしょう。残された帝の悲しみ、兄弟たちの悲しみには激しいものがあり、定子追悼への思いも一気に高まっていきます。
そのような空気感の中で、『枕草子』の執筆は続けられていったのです。執筆の意図と読者、流布のありかたを改めて考えてみましょう。
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体験日・開講日 |
いつでも視聴できます。 |
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受講料 |
12,000円(税抜) 初めての方は、入会金500円、1年以上受講のない方は、再入会金500円が必要です。ただし1DAY、体験講座、70歳以上の方は入会金が不要です。 |
講師 |
三田村雅子 (国文学者・フェリス女学院大学名誉教授) 講師プロフィール
早稲田大学大学院卒業。上智大学教授、フェリス女学院大学教授を経て現職。『源氏物語』と『枕草子』を主な専門とし、幅広い観点から古典文学を捉える。NHK教育テレビの高校講座「古典への招待」で長年講師を務めた。2025年には宮内庁の「歌会始」に召人として招かれる。著書『源氏物語 感覚の論理』『枕草子 表現の論理』(有精堂)、『源氏物語絵巻の謎を読み解く』(三谷邦明との共著・角川選書)、『天皇になれなかった皇子のものがたり』(新潮社・とんぼの本)、NHK 『100分de名著』 ブックス 紫式部 源氏物語 (NHK出版)ほか多数。 |
持ち物 |
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